市民協働ですすめる長岡の顔「アオーレ長岡」【視察報告】

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中心市街地等活性化特別委員会で、1月17日~18日、新庁舎や交流センターなどの整備事業について調査するため、栃木県真岡市議会と新潟県長岡市議会を訪問しました。特に長岡市は、前市長の頃から先進事例として取り上げてきており、市役所機能と交流センター機能の複合施設「アオーレ長岡」、さらに現在整備が進められている人づくりと産業振興の拠点「ミライエ長岡」について、概要や運営体制などをお聞きしました。

【アオーレ長岡】

(1)アオーレ長岡誕生まで

◆市民センターの取組を開始

長岡市は、平成に入り、徐々に中心市街地の空洞化が進行し、その活力低下が問題となっていた。市民への行政サービスの充実とあわせて、平成13年10月に、市民団体の活動拠点、国際交流、子育て支援、まちの駅の機能を持つ「ながおか市民センター」を既存建物を活用してオープンさせ、市民がソフトを成長させる新たな取組としてスタートさせた。

◆公共機能をまちなかに集約配置

 「長岡市中心市街地構造改革会議」から「公共機能のまちなか回帰」を進める提言を受けた。平成16年10月に新潟県中越大震災で被災し、旧本庁舎が防災拠点に必要な耐震性が不足していることを再認識。また、3度の市長村合併により本庁組織が7カ所に分散していることで市民も職員も不便な状況にあり、まちなかに集約して、多くの市民が集まりやすく利用しやすい市役所を目指すこととした。

◆市民周知のための説明会、ワークショップ

平成18年度から、市民周知のための説明会として、意見交換会(約100人)、地域別懇談会(16カ所、約560人)、移転に関する市政懇談会(6か所、約860人)開催し、19年度から、市民ワークショップを行っている。

◆長岡の顔としてアオーレ長岡が誕生

長岡市を含む11市町村により新長岡市が誕生し、長岡広域市民の「ハレ」の場、新しい長岡の「顔」として、平成24年4月に「まちなか型公共サービスの展開」と「市民協働によるまちづくり」を一体的に推進するシティホール「アオーレ長岡」がオープンした。

(2)施設の概要

◆環境に配慮した複合施設

アオーレ長岡は、長岡駅前の約1.5haの区域に、アリーナ、ナカドマ(屋根付き広場)、市役所本庁機能、議場、市民交流ホール、市民協働センターなどが一体的に配置された複合施設である。議場は市民に開かれたシティホールの象徴として1階に配置している。全体として、木の質感を活かしたデザインで地場産の木材が多く使われている。また、屋上緑化、太陽光発電、地場産の天然ガスを活用したコジェネレーションシステムなど環境への配慮もなされている。

◆建設事業費とランニングコスト

建設事業費は、国支出金29億200万円、地方債54億3,600万円、市都市整備基金45億円、一般財源3億800万円、合計131億4,600万円となっている。10年が経ち、修繕が必要となっており、ランニングコストは年間5~6億円でとのことであった。

◆市民が利用しやすい公共サービスの展開

「まちなか型公共サービスの展開」については、市役所機能をあえて駅前に分散配置し、まちなかの賑わいや回遊性を創出。分散によるサービス低下を防ぐため、5年をかけて大改革を検討し、職員の意識改革を進め、1階フロアに総合窓口を設置した。市民に身近な窓口サービスを集約し、複数の手続きも市民が動かずに担当職員が入れ替わり対応するワンストップサービスを提供している。また、市役所業務を幅広く紹介し案内する市役所コンシェルジュや案内誘導員を配置、土・日・祝日も開設するなど、市民により便利な市役所を実現している。

◆市民協働を広げる取組

「市民協働によるまちづくり」については、3階に市民協働センターがあり、2つのNPOが市民活動をサポートしている。NPO法人ながおか未来創造ネットワークは、ナカマド、市民交流ホール、アリーナなど市民交流の拠点としてのアオーレ長岡の運営を委託されており、行政が下支えするため職員を3人出向させている。委託費は年間9000万円。ナカマド、ホワイエ、市民交流ホールについて、営利以外の一般利用を無料とし、自由度の高い運営を行っている。また、NPO法人市民協働ネットワークは、相談業務や活動支援を担い、人や団体のつながりをつくり、参加を促し、市民活動の輪を広げている。協働センターへの登録団体数は400を超えている。
「アオーレ長岡」は、様々なイベントに利用されているだけでなく、日常的な市民の利用も多く、令和4年、施設の稼働率は82.86%、利用者数は83万6千人となっており、まちなかに賑わいを創出している。

【米百俵プレイス ミライエ長岡】

◆人づくりと産業振興の拠点整備

西館が令和5年7月にオープン。東館は令和8年度にオープン予定である。
米百俵の精神は、戊辰戦争から復興をめざす長岡藩に送られた救援米を、大参事の小林虎三郎が藩士に分け与えず、教育の大切さを説いて国漢学校の開校資金に充てたことで、人づくりはまちづくりとして受け継がれている。「人づくり」と「産業振興」の拠点として整備が進められている。

◆産業やビジネスの図書を中心とした互尊文庫(図書館)

オープンした西館には「互尊文庫」は、延床面積4600㎡、蔵書数4万冊の公立図書館で、産業やビジネスに関連した図書を中心に配架している。様々な形の本棚が配置され、「くらす」「はたらく」「ひらめく」など独自の視点で本が分類されている。ソファやテーブルも各所に置かれ、ゆったりとし、会話も楽しめる空間となっている。

◆新たな価値を創造し、地域の産業を次代につなぐ拠点

「ナデックベース」は、企業の人、研究者、企業家、学生等の多様な人材が集まり、地域の産業を次代につなぐための新しい価値を創造する「産業協創」の場である。企業や大学の関係者などが自由に訪れ意見交換できる「イノベーションサロン」、事業者や学生が自由に試作できる「ものづくりラボ」、セミナーや講義が開催できる「ミライエステップ」などがある。

◆今後の展開

令和8年度オープン予定の東館には、商工会議所や市の商工部、観光・交流部、産業支援機関、若者ラボ、レストランなどが入る予定である。様々な人が市内外から訪れるオープンな場、人が出会う場として長岡全体のセンター機能、さらには新潟県中越地域の拠点としての役割を果たす施設を目指している。

【感 想】

長岡市は「まちなか型公共サービスの展開」と「市民協働によるまちづくり」を2つの軸として、検討と実践が積み重ねられ、平成24年に「アオーレ長岡」をオープンしている。新しい市役所のあり方として、徹底した市民目線で利用しやすい市役所を目指すとともに、市民が自らの施設として利用し、集い、語り合い、様々な活動ができる空間を創出している。

市民交流・協働を支えているのが、2つのNPOが入る市民協働センターである。平成13年に既存建物を活用して、多分野に渡って市民がソフトを成長させる取組として市民センターをスタートさせている。市民一人ひとりが主体となる市民参加、市民協働のまちづくりを、長い時間をかけて進めてきたことが、アオーレ長岡の実現につながっている。さらに、人づくりと産業振興を支える「米百俵プレイス ミライエ長岡」は、企業、研究者、起業家、学生など多様な人材が市内外から集まり、地域の産業を次代につなぐための新しい価値を創造する「産業協創」の場として、様々な協働、官民連携が展開されている。

本市では、中心市街地活性化のために、(仮称)地域交流センターの計画が進められている。市民交流を前面に押し出し、本庁機能や議会機能を包含した施設としているが、市民交流の推進力をどこでどのようにつくるのか。令和12年完成というタイトなスケジュールのなかで、アオーレ長岡をモデルとするならば、本市全体の市民協働のあり方を考え、その取組を急ぎ進める必要があるのではないか。今回の行政視察から学ぶものは多いが、本市の実情に見合ったビジョンを明確にし、市民理解を深めることが大切と感じた。

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