2024年に介護保険制度が改定されます。介護報酬は全体では1.59%増額されますが、訪問介護については「身体介護」も「生活援助」も減額となります。高齢になっても在宅で暮らし続けるためには重要なサービスです。厚生労働省の調査では、訪問介護の事業が他のサービスと比較して利益率が高いことを理由として挙げていますが、訪問介護の現場には、衝撃と落胆が広がっています。
訪問介護の事業所は、高齢化が進み、人材が不足していて、サービスの依頼があっても対応できないのが状況とのことです。登録ヘルパーにもお願いしながら、何とか黒字にしているとの事でした。今回の改定は、訪問介護への無理解の現れであり、在宅介護は崩壊すると話す方もいました。
ある経営者は、「ベースアップ、処遇改善手当が他の事業より手厚いのは確か。しかし黒字化には裏がある」と語ります。「実働時間だけに給与を支払う登録ヘルパーが多くいて、利用者がショートステイ、死亡等でサービスが中止になると即刻仕事を失います。可哀想ですが、事業所の収入源がないのでどうにもできません。この状況で正社員を確保するのもリスクが高く最低限になります。ヘルパーもそれを知っているから求人を出しても来ません。スタッフの高齢化だけが進んでいきます。限られたスタッフで限界まで回して、狭い黒字が生まれているのです。地域が真ん中で在宅生活を支えていく介護保険のスタートは何だったのでしょうか」
介護保険制度は国の制度であり、自治体で変えられるものではありません。しかし、自治体は介護保険の運営主体としての保険者です。利用者や事業者など現場の声を聞き、課題を共有して、必要な人に在宅サービスが届く取組を進めるべきです。あるスタッフは、訪問介護は感謝されることが多く、自分が役立っていると感じやりがいがあると話していました。その「やりがい」を若い人に伝える場があればいいと思います。訪問介護の重要性を訴え、国に対して処遇改善を求めるとともに、人材確保に向けた取組を地域で進めることが大切と考えます。